教員クローズアップ:法を知り、社会を知る〜外国人との共生社会に向けて (II)
前回に引き続き、法学の安藤由香里教授にお話を伺いしています。海外での学生生活で驚いたこと、先生のガッツの原点、そして海外の美味しいもののお話など、今回も興味深いお話がたくさんです。(前回のインタビューのリンクはこちら)
高野
海外での 学生生活で特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
安藤
イギリスの法学研究科に修士課程で行った時に、日本と学び方が全然違うなと思いました。日本だと、教員が話して、「意見ある?」とか言ったら、学生が質問するみたいな感じじゃないですか。
高野
そうですね。そしてあまり手が挙がらない。
安藤
イギリスだと、先生が喋っていようがなんだろうが、学生のほうがガーって入っていくんですよね。 それをしないと、いても幽霊みたいな感じで、どんな変な意見だとしても自分の意見を言わないといけないっていうのが、日本とはすごく違うなと最初は思いました。
高野
積極性が試されるんですね。
安藤
そうですね。授業の進め方が日本とは全く違うということに、最初はすごくびっくりして、なかなか質問ができなかったんですよ。それでちょっと悩んで、教員に相談しに行ったこともありました。

高野
何かアドバイスありましたか。
安藤
一番に質問した方がいいよと言われました。色々な話があり、いろんな質問が出ると、それを全部踏まえた上で質問しないといけないけど、一番最初に質問すれば、誰もまだ質問してないので、楽だよっていうアドバイスを受けました。
高野
話がどんどん変わっていっちゃいますもんね。安藤先生もそういう風になっていかれましたか。
安藤
できたかどうかわからないですけど、「そうか」と思って、できるだけやるようにはしました。わーってみんなが喋ってる中で一番最初に入っていくのも大変でしたが、慣れてくるとそれができるようになりました。イタリア人はよく喋りますが、多分イタリア人に負けないぐらい喋るようになりました(笑)。

高野
ご専門以外で、ご興味あることを教えて頂けますか。
安藤
旅行がすごく好きですね。 だから大学の時からアルバイトしてお金貯めて、結構色々な所へ行っています。最初は東南アジアで、卒業旅行はインドです。楽しかったですね。
高野
学生におすすめの旅行先はありますか。
安藤
インドはちょっとハードルが高いので、最初だったら今ならベトナムかな。すごくおすすめですね。 今ならLCC(格安航空会社)で割と安いものがあるので手軽に行けます。また、安全で食べ物がおいしい。観光名所は古都とか 昔の都もありますし、ハノイやホーチミンでは活気がある市場を歩くのも楽しいですね。
高野
最後に、先生の授業を受ける富山大学一年生へのメッセージやアドバイスをお願いいたします。
安藤
学生のうちにいろんなことをやってもらいたいなと思います。特に旅行に行って、自分の世界を広げてもらいたいと思います。
◆インタビューの場に参加した谷井先生と福田先生からも安藤先生へ質問がありました。
谷井
先生はすごくアクティビティーが高いのですが、その原点はどこにありますか。
安藤
誰かの影響というよりも、多分、高校一年生の時にアメリカに行った経験が大きいかもしれないですね。私の高校って、そんなにはじけてる高校じゃなくて、結構真面目な子が多い学校でした。一年生の時に、アメリカにホームステイしたいと思い、行きたいと言ったら、校長室に呼ばれました。そういう人が今までいなかったようで、「何があっても 知らないよ」と言われて、私は「それでもいいです!」と言って、高校一年生の夏休みにカリフォルニア州でホームステイしたんです。それまでは英語できるつもりでいたんですよ。でも行ってみたら全然できなくて、頭をガチって叩かれたような状態でした。それなのに、ホームステイの人たちと喧嘩したんですよ。どうしても許せなかったことがおこったんです。私の部屋の中に入ってきて、スーツケースの中を荒らされたんですよ。それは許しては絶対ダメと思って、 つたない英語で喧嘩をしました。その時に、今度からは絶対英語で喧嘩できるようになろうと思って、それで英語の勉強を頑張りました。今はもう英語でバリバリ喧嘩できます(笑)。
スーダンでの選挙監視の際のお写真(I)
高野
まわりがそういう環境じゃない中でもホームステイに行こうっていうガッツと、行ってまた喧嘩するというガッツがおありだったんですね(笑)。
安藤
不合理なことをされたら、やっぱりそれは甘んじるのは嫌ですね。原点はそういうところかな。
福田
今まさに、日本では様々な国から来た方々が増える中で、共に社会で生きていくことが求められる時代になっているというお話がありました。そのような中で、特に若い学生さんたちにとって、大学在学中にどのようなことを意識して、生活したり学習したりすれば、将来そのような多文化社会に適応できるようになるのでしょうか。具体的なアドバイスがあれば、是非教えてください。
安藤
大学っていろんな方がいるじゃないですか。外国籍の方ももちろんいるし、是非そういう人たちと積極的にいろんな意見交換をしてもらいたいなと思います。社会に一回出てしまうと、なかなかそういう機会はないと思います。 大学時代ってそういうことができるすごく重要な機会なので、例えば、外国籍の方がいたら積極的に話しかけるとか、そういうことをしてもらいたいと思います。留学生からすれば,日本 に来て日本人と交流したいのに、日本人と分離していることが多いです。そういうことを 以前から留学生に聞いていました。以前、留学生向けの授業をやっていました。その大学では留学生向けの英語コースと日本語コースの2つが同時に走っていて、そこでバチっと分かれてしまっていました。留学生は日本人と交流したいし、日本人も実は留学生と交流したいけれども、その機会がなくて、コミュニティが完全に分かれていたんですね。 それはすごく残念なので、交流できるような機会があれば自然に両者が色々と意見交換できるのじゃないかと思います。
福田
富山大学でも様々な国から留学生の方々が来ています。このような国際的な環境を活用して、今後、少しでも学生間の交流を促進することができればと思います。
安藤
そういう機会を作るのも大学の役目ですね。私が今まで一番効果的だったと思うのは、授業で日本人学生と留学生に一緒に調査してもらうことです。 調査をするっていう授業を日本語でも英語でも受け持っていたのですが、英語クラスの方は、留学生で日本語があまり得意でない子が多かったので、その子たちが日本で調査をしようと思っても、日本語の壁がありますよね。そこで、日本語クラスから有志を募って、英語クラスに来てもらい、グループに 入って一緒に調査してもらいました。そしたら、日本人と留学生が色々と一緒に活動することで 仲良くなって、日本人学生にも良かったし、留学生にも良かったので、そういうようなクラスを作るっていうのも一つの手かなと思ってます。
授業で、一緒にじゃあ話してねって言っても、全然会話が進まないこともあります。でも、例えば調査項目を一緒に訳すとか、調査をするっていう活動を一緒にすることによって、会話をしないといけなくなるわけです。そういうしくみが良いと思います。
福田
お話をお伺いして、今後、是非そのような方向で考えていきたいと思わされました。
また、先ほど海外での食の話が出ましたが、安藤先生は様々な国に行かれている中で、特に印象に残っている美味しい料理や食文化はありますでしょうか。
スーダンでの選挙監視の際のお写真(II)
安藤
フランス、イタリアの料理はすごく美味しいですね。ドイツ料理と比べるとフランスとイタリアの料理はかなり違うなって思います。イタリア人、フランス人ってそもそも食に対する意気込みが違うんですよ。食への追求心っていうか、探究心っていうのがすごく強くて、美味しいものを食べることに命をかけてる感じですね。
そうは言いましたが,私はどこに行っても食に困らないんです。たとえば、スーダンに行った時も食には全然困りませんでした。大使館の人に、食を含めてここまでスーダンを楽しむ人は初めてだと言われました。美味しいかどうかはちょっと置いといて、髪の毛みたいな細いチーズがあります。これがすごく珍しいので、それを買いに行きました。それから、杏とか、生姜が入ってるコーヒーがあります。そういうのが好きで、色々と買い物に行きました。
高野
スーダン滞在期を読ませていただきましたが,他の方はお腹が痛くなったと書いてあり、大変だなと思いました。先生にはそういう経験はなかったのですか。
安藤
それに関してはおもしろい体験をしました。スーダンで泊まってたホテルでは、ケニア人のシェフ が朝昼晩の食事を作ってくれました。私たち日本人が滞在してたので、 彼としてはすごく気を遣って、日本人向けの食事を作ってくれました。昔、日本食レストランで働いてたらしく、日本食を作ってくれたんですが、朝からとんかつが出てきたんです。日本食だから喜ぶだろうと、すごく気を遣ってくれているのだけど、ちょっと違うよっていうのはありました。彼には、日本人は、朝はふつう、とんかつを食べないことを伝えました。
◆様々な海外経験を通して多くの学びをされてきた安藤先生のお話は、とても聞き応えがありました。私たちも、まずは身近なキャンパス内から国際交流を図っていきたいと思います。安藤先生、興味深いお話をたくさんありがとうございました!
(安藤先生のスーダンでの選挙監視の様子はこちらから)