読書案内・新入生にすすめる本

読書案内・新入生にすすめる本

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
読書は心を豊かにし、良書との出会いは一生の宝となります。そこで教養教育院教員から皆さんへ読書のすすめを書くことにしました。皆さんに是非読んでもらいたい本、自身の将来を考えるにあたって役立ちそうな本、授業科目に関連したテーマの本などをそれぞれの教員が思いを込めて紹介しています。気になる本があれば手に取ってみてください。本を介して皆さんと教員との距離が一歩近づくことを期待しています。
(※教員がすすめる本をクリックしてください。)

教養教育院長

武山 良三

 読書は知識を得るためだけでなく,想像力を高める上でも効果的な行為です。紙の質感を楽しみ,自分のペースでページをめくり,文字を読む度に思いを巡らす。そこに大きな学びがあることが魅力です。
武山院長がすすめる本

1.これからのデザイン思考
小山田 那由他
 ,エムディエヌコーポレーション,2021年
色や形といったスタイリングではなく、なぜその色や形を使うのかといった考え方に着目した「デザイン思考」は、社会課題の解決や新たな価値創造に有効な考え方として注目されています。多くの本はスタンフォード大学で提唱されたデザインプロセスを軸としたデザイン思考を紹介しているのに対して、本書は考え方や図を用いたプロセスを紹介している点がお勧めです。

2. APPLE
三木 健著,CCCメディアハウス, 2017年
「りんご」という誰にでもわかるものをテーマにしつつ、それを大きさや色,平面や立体、言葉や概念などさまざまな観点で捉え直すことを豊富な図版を用いて紹介しています。観察・分析・考察・立案・試作・表現といったデザイン思考の構成要素を、楽しく学ぶことができる本になっています。

3. 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
山口 周著,光文社新書, 2017年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本
論理的・理性的な情報処理のスキルが限界を迎えていること、世界を代表する企業経営者が直感や感性的なアプローチを重視した取り組みを始めていることを、「美意識」をキーワードにわかりやすく解説しています。最先端の技術を活かす上で、文化がいかに重要かが理解できます。

人文・総合教育部門

安藤 由香里 『日本国憲法』『国家と市民』『市民生活と法』

 皆さんが、ニュースなどで見かける社会問題は、正解がひとつとは限りません。必ずしも正解があるとも限りません。立場が異なれば、どれも正解になり得る場合もあります。多様な視点から様々な検討をするためには、SNSやインターネットの情報だけでなく、本を読むことで新たな発見をし、報道に惑わされず、批判的に見る知識を蓄えてください。
安藤教員がすすめる本

1. 開かれた入管・難民法をめざして:入管法「改正」の問題点
安藤 由香里,小坂田 裕子,北村 泰三,中坂 恵美子著
 ,日本評論社2024年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
2023年の入管法「改正」は、国際人権基準から見て、どのような問題があるかを、多くの人に知ってもらうために、超大急ぎで書いた本です。日本の入管法、難民認定制度の問題を明らかにしています。本書は、教養教育の授業「国家と市民」の教科書として国家の役割や市民の役割を考えていきます。

2. こども六法の使い方
山崎 聡一郎著,弘文堂, 2021年
○○は犯罪だからダメと言われても、なぜダメかわからないと納得できませんよね。こどもになぜその行動がダメか説明するために、現代の社会問題についてわかりやすく大人向けに書かれています。「法」がなぜ必要なのかを考える出発点になるかもしれません。

3. 目で見る憲法 第6版
初宿 正典,大沢 秀介,高橋 正俊,常本 照樹,髙井 裕之,上田 健介著,有斐閣, 2024年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
論理的・理性的な情報処理のスキルが限界を迎えていること、世界を代表する企業経営者が直感や感性的なアプローチを重視した取り組みを始めていることを、「美意識」をキーワードにわかりやすく解説しています。最先端の技術を活かす上で、文化がいかに重要かが理解できます。

谷口 美樹 『治療の文化史』『日本の歴史と社会』

 わけのわからないものがことばとして顕われてくる、混沌のなかを逍遥する愉しさ、それらを過程として体験していくのが、読書の醍醐味ではなかろうかと思います。ご紹介するのは、如上の体験をもたらすであろう『現代思想』の特集号です。中井久夫さんという人物と、直接に出会った人、著書を介して出会った人たちが寄せた文集となっています。どうしようと気ばかり焦ってしまうとき、どこへも関心が向かっていかず固まっているとき、などなど、大学に入って抱えている思いを、自分を動かしていく力に変換させていく、そのような契機となる文章に出会えるのではないかと思います。あなたに、手にとって良かったと思っていただける本を担当授業でも紹介したいと思っています。ぜひお声がけください。お話しできればうれしいです。
谷口教員がすすめる本

1.『現代思想 総特集 中井久夫1934―2022』第50巻第15号
樫田 祐一郎編
 ,青土社,2022年
寄稿者は、医学、哲学、美学、社会学、人類学と多岐にわたります。「中井さん言葉をむさぼり読んで、そして書きたくなったことを書いた」「中井先生の『本業』にかかわる文章を読んだ。それは何というか、腰の力が抜けてその場に座り込んでしまうような出会いだった」「自分が自分を診るその視線や手つきに中井さんが宿っている」 寄稿文の一節を引用してみました。併走者として中井久夫さんが存在するという感覚を味わってみるのはいかがでしょうか?

木村 元 『環境』『SDGs入門』『現代社会論』

 皆さんの切実な悩み(コミュニーケーション能力,自分らしさ、将来の職業/大学で何を学ぶか等)の意外と近くに、学問(や書籍)はあります。自分の素直な関心を入り口として、書籍を読みはじめると、芋づる式に世界がひろがっていきます。感性にあう本に出会うには,ある程度の試行錯誤が必要ですが、学生時代はその絶好の機会です。ぜひ身近なものとして、学問の扉をひらいてほしいと思います。
木村教員がすすめる本

1. 寺田寅彦 随筆集〔全5冊〕
小宮 豊隆 編
 ,岩波書店,1947年/1948年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本
物理学者であり、夏目漱石の弟子でもあった寺田寅彦による、科学と芸術が融合されたエッセイ集です。学生時代、『科学と文学』『科学者と芸術家』『科学者とあたま』『自画像』『神話と地球物理学』など、憧れを抱きつつ、とても熱心に読みました。

2. 現象学入門
竹田 青嗣著,NHK出版, 1989年 所蔵情報:中央図-4階研究用図書
「正解のない問いについて考える力」「自分らしく考える(生きる)力」を磨いてくれる哲学の本です。社会や個人にとっての難問を前に、「何を足場として考えはじめれば良いのか分からない」、という人にお勧めです。

3. 人新世の「資本論」
斎藤 幸平著,集英社,2020年

SDGsとは方向性の異なる、社会課題解決に向けたモノの見方・社会構想を学べる、経済思想の本です。「本当の意味でSDGsを達成するために何が大切か」を考えるヒントとして読むのも面白いと思います。

4. エコロジカル・フットプリント
M・ワケナゲル, W・リース著,池田 真里 訳,和田 喜彦 監訳・解題,合同出版,2004年 所蔵情報:中央図-6階研究用図書

例えば「世界の人々が日本人と同じ生活をすると、地球2.9個分が必要」のように、地球の有限性と、人間活動との繋がりを端的に表現するエコロジカル・フットプリントの本です。環境問題解決に向けて大切な「ライフサイクル思考」を学べます。

5. 世界はシステムで動く
D・H・メドウズ著,枝廣 淳子 訳,小田 理一郎 解説,英治出版,2015年

社会構造も個人生活も“複雑さ”を増すなか、「本質をつかむ考え方」について教えてくれる本です。「氷山の“一角”ではなく“全体”を見る」視点と技術、データサイエンスの意義に関する示唆を与えてくれます。

理系教育部門

彦坂 泰正 『物理学IA,IIA』『情報処理』

 私自身最近は本はほぼ読まないので、これといった気の利いたメッセージはありません。でも、電車やバスに乗ったときの暇つぶしにミステリーやサスペンスを読むのは結構楽しいですよね。
彦坂教員がすすめる本

1. ご冗談でしょう,ファインマンさん
リチャード P. ファインマン著
 ,岩波書店,1986年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
最近はお勧めできるような本は読んでいないので、随分古い本になってしまいます。超有名な物理学者の奇想天外な物語です。ノンフィクションですが、とてもそうとは思えないような面白い話の連続です。

谷井 一郎 『生命科学入門』『生命科学I・II-A/B/C』

 地球規模課題への対応など人類・地球の未来へ向けて私たちが何をなすべきか、その答えは専門的知識だけでは得られません。様々なものの見方ができるように、特定の分野に偏らない多読をすすめます。私の学生時代を振り返ると山本周五郎の小説にのめりこんだ時期がありました。少し難しいと思う本は枕元に積んでおき、興味を持ったものから読んでいました。
谷井教員がすすめる本

1. What is life?
ポール・ナース著
 ,ダイヤモンド社,2021年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
生命の本質は生物学者のみならず哲学的にも重要なテーマです。ノーベル生理学・医学賞受賞者である著者がこのテーマに答えています。およそ80年前に量子物理学者シュレーディンガーが著した同名の本のオマージュです。物理学者が生命の本質を見極めようとしたことは驚きです。

2. 生物と無生物のあいだ
福岡 伸一著,講談社現代新書,2007年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
上記の本と同じテーマを扱っています。福岡氏は、“生命を動的平衡にある流れ”と見ます。見方が違えば生命の全く違う側面が見え、発想の柔軟さの重要性に気づかされます。福岡氏の本には文化系と理科系の知の統合があり読みやすく、そのほかの著書もおすすめです。

3. 沈黙の春
レイチェル・カーソン著,新潮社,1974年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

1950~1970年代には産業の急速な発展による公害が大問題になりました。1962年に海洋生物学者である著者はこの本で環境問題を告発しました。環境保護思想の源流がここにあります。環境汚染物質による先天異常や健康被害について、科学的知見に基づいた説明は説得力があります。

4. 7つの習慣 人格主義の回復
スティーブン・コヴィ著,キングベアー出版,2013年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

自己啓発本のベストセラーです。自分のライフスタイルや思考パターンを見直すための重要原則を、体験談を交えてわかりやすく説いています。かつて朝から深夜まで仕事をしている時期にこの本(旧版)と出会い、様々な気づきがありました。社会に出る前に読んでおくことをおすすめします。

5. Life Shift(ライフ・シフト)
L・グラットン,A・スコット著,池村 千秋訳,東洋経済新報社,2016年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

皆さんの親の世代のロールモデルは今の若い世代にとって必ずしも有効ではありません。本書は,若い世代がどのように人生を築くべきかを考える手引きとなります。仕事やお金のことだけでなく,お金に換算できない見えない資産の重要性など,学ぶことがたくさんあります。本書を手に取って,自身のキャリアについて考えてはどうでしょうか。

宮島 光志 『医療と地域社会』

 私自身の学生時代(特に教養教育の期間)をふり返ってみると、文庫本で手に入る「人類の古典」を読み漁ったことが懐かしく思い出されます。ここではそうした古典作品は取り上げないで、新刊書ばかり選んでみました。どの本にも著者の人生が凝縮されていて、皆さんに「知の悦び」を語りかけます。
宮島教員がすすめる本

1. 21世紀の「老い」の思想 ―人生100年時代の世代責任―
森下 直貴著
 ,知泉書館,2022年
新たな「老成学」を提唱する意欲作で、密度の濃い人生論です。副題の「世代責任」という語が示唆するように、独自の世代論が展開されていて、若い世代の読者に人生の展望を与えてくれます。

2. レジリエンス―よみがえる力―森・風景・地域・人の交差の中で
清水美香編,日本評論社,2023年
この本は自然・人・社会の相互関係を〈全体的に観る〉姿勢を教えてくれます。全編を通じてSDGsが強く意識されており、多様性の尊重という姿勢が貫かれています。コラムも充実しています。

3. メディアとしての身体:世界/他者と交流するためのインタフェース
長滝祥司著,東京大学出版会,2022年 所蔵情報:医薬図-1階 一般書書架

《生態心理学から知の生態学へ》を掲げるシリーズの1冊で、現代思想の最前線を知ることができます。教養教育の目標が〈統合知〉の獲得であるとすれば、本書は目標達成のヒントになります。

4. アーレントと革命の哲学:『革命論』を読む
森 一郎著,みすず書房,2022年

本書の原型は東北大学の教養科目(講義)と知って、親しみを感じる一方で、質の高さに驚きました。コロナ禍の最中、自由・平等・友愛、そして幸福について、学生と一緒に思索した成果です。

5. 時事新報社主 福沢諭吉:社説起草者判定による論客の真実
平山 洋著,法律文化社,2022年

思想史研究の「科学」性を見せつける力作です。広く知られた福沢諭吉の業績と思想について、本書では定説の修正を迫る緻密な考証が展開されています。地道な基礎研究の模範といえます。

片桐 達雄 『生命科学入門』『生命科学ⅠABC・ⅡABC』『免疫学入門』など

 活字離れが進む昨今、たまには紙の本を読んでみるのも良いよ。特に大学時代に出会った良書はあなたの一生について回ると思います。昔はふらっと本屋に立ち寄ることをおすすめしていたのだけれど、本屋さんめっきり少なくなってしまいました。それでも、大学の生協あたりの本屋さんで本の背表紙をふむふむと見て回るのも良いし、講義のないとき図書館に出かけてみるのも良いと思います。
片桐教員がすすめる本

1. 坂の上の雲
司馬 遼太郎著
 ,文春文庫,1999年1月10日
「愚者は経験に学び智者は歴史に学ぶ」といわれます。私的にはちょっと異論があるところです。愚者は何も学ばない…。それはさておき、大学1年生のみなさんは歴史小説を読んで歴史に学びましよう。おすすめします。なかでも司馬遼太郎氏の作品は、厳密には史実と異なる部分も多々あってそのまんまを歴史と勘違いしてもらうのは困るのだけれど、ある時代に懸命に生きた主人公達の司馬節で語る生き様はこれからの人生観に大きな影響を与えることでしょう。あなたが生まれた時代と社会の中で、自分の命をどう使うべきか、ヒントになるといいですね。

2. 峠
司馬 遼太郎著,新潮文庫,2003年10月25日
歴史小説に分類される司馬遼太郎作品の中でも、この「峠」と次の「梟の城」はかなり異彩を放つ作品ただと思います。「峠」幕末、河井継之助の一生を描いていますが、司馬遼太郎が描くところの河井は、それこそ自分の命を自分の「良知」に如何に殉ずるかという生き方をしたことになっています。この作品における「河井継之助」の生き様を楽しむためには、バックグラウンドとして「陽明学」と「唯心論的認識論」という言葉を調べておくと良いかもしれません。ただ陽明学派の純粋苛烈さに憧憬するだけでなく、現実における危険さと哀しさまでも深く読み取れると、あなたの人生に深く刻まれる一冊になりますよ。

3. 梟の城
司馬 遼太郎著,新潮文庫,1965年5月4日

先に紹介した「坂の上の雲」「峠」よりも、司馬遼太郎の初期の作品であり、直木賞作品です。先の2作と完全に異なるフィクションです。(因みに先の2作もフィクションである事はお忘れ無く)。映画にもなっていますが、まあ本を読みましょう。主人公の葛籠重蔵は伊賀忍者です。今回片桐が紹介する作品は、この作品も含めて生まれ落ちたからには、その時代・その環境でいかに「自分の命を使うか?」という、皆さんのテーマに作品中の主人公の生き様と照らし合わせること、あるいは照らし合わさないことを楽しめる…だろう!と、いうことで、あなたの人生の糧となるおすすめ本なのです。

4. 新装版 孫子
海音寺 潮五郎著,講談社文庫,2008年7月15日

司馬遼太郎作品に次いでおすすめするのは、「孫子」です。孫子は「軍略家」として有名です。
中国春秋時代の兵法書『孫子』を著したとされる思想家孫武の半生を描いています。恐ろしく昔の戦略思想が現代においてもいささかも色あせずに通用することにあなたは驚くでしょう。そして、あなたが生きていくこれからについて、「うまく生きていく」ための考え方とヒントがたくさん得られると思います。ビル・ゲイツの愛読書が「孫子の兵法」(海音寺潮五郎作品では無いと思います)である事は有名ですね。

5. 生命潮流: 来たるべきものの予感
Lyall Watson著,工作舎,1981年1月1日 所蔵情報:中央図-6階研究用図書

著者間のライアル・ワトソンは放浪する生物学者として有名です。地球上になぜ生命が発生したのか? 心とは何か? 科学進歩は人類に何をもたらすのか? 進化とは何か? いろいろな不思議なエピソードと科学的思考のはざまで、大変興味深い科学的仮説にたどリつく過程を楽しめる著作です。有名どころでは101匹目のサルが芋を洗ったとたん、なぜ全島のサルも芋洗いして食べるようになった?という事実を素に進化は時間軸に垂直にのみ起こるにあらず、水平にも起こりうる。突然変異ののみに帰結するのではなく。「意識も進化する」という仮説はあまりにも有名です。あなたはどう考えるかな?

6. コウモリはウイルスを抱いて空を翔ぶ(副題)⽣き物たちのネオ免疫学
新田 剛著,ブックマン社,2023年5月9日

免疫学会で同じ高校生物教科書の免疫関連部分審査を担当している仲間の著書です。
新型コロナウイルスの感染拡大パンデミックを軽々した今の人類にとって免疫学は必須の知識です。この免疫学を興味深く核心を突いて学ぶ事ができる本です。
内容は● 未知のウイルスの発⽣源はなぜいつもコウモリなのか?● 哺乳類の「妊娠」を可能にしたのは太古のウイルスのおかげ?● 伝染するがんがあるってホント?● 免疫がつくってどういう状態?、医学ではなく⽣物学の視点から解説した、全く新しい「免疫学講座」。

杉森 保 『基礎化学-A/B』『情報処理』『自然科学への扉−B』など

 読書に限らず、常に幅広い視野を持ち、想像力と素朴な好奇心を大切にしていろんなことを楽しんでほしいとおもいます。これまでに興味を持っていたことでも良いですが、これまでに目を向けていなかったような事柄に関する書籍を読むことは、間違いなくあなたの糧になるでしょう。
杉森教員がすすめる本

1. 文学は地球を想像する
結城 正美著,岩波書店, 2023年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本

環境問題というととかく理系が注目されがちですが、文学が「環境」をどう捉えてきたかを知ることは、環境問題を考える上での視野を確実に広げてくれます。本書で紹介されている書籍を読んだことのある人もいると思いますが、私は知らないものが多かったのでとても刺激を受けました。

2. 内向型人間のすごい力
スーザン・ケイン/古草 秀子訳,講談社, 2015年 所蔵情報:中央図-4階研究用図書他

自分はどんな人間なのか、周りの人たちはそれぞれどうなのか、これからはそういった視点を持つことも大切です。これからみなさんが他人と関わるときに意識しておいた方が良いことが書いてあると思います。中でも3・9・10章は特に興味を持って読んでもらえると思います。

3. あなたは大学で何をどう学ぶか
西山聖久著,化学同人,2023年

いろいろな例を用いてとりつきやすく書かれており、特に前半は、将来像がはっきりしないまま大学に進学した人には考え方を整理する指針を提供してくれると思います。課題の探し方、問題の見つけ方、課題解決のための考え方などはどの分野でも通用するでしょう。
4. アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎著,東京創元社,2006年(文庫版) 所蔵情報:中央図-1階学生用図書 他
授業内容の質問に来た学生さんと雑談していたときに教えてもらって、場面が繰り返し切り替わりつついろんな事柄がつながっていく面白さを感じた小説です。伊坂さんの他の著作を読むきっかけになりました。主人公が大学生だし、ちょうどいいかなということで挙げておきます。

5. 葬送のフリーレン
山田 鐘人・アベ ツカサ著,小学館,2020年~

昨年アニメ化された人気コミックスなので、知っている人も多いと思います。第1巻の1話2話あたりで興味を持てたら、しばらく楽しめると思います。私はこの世界観にとても惹かれました。アニメは劇伴がすばらしいので見たことのない人は是非そっちも見てみてください。

吉田 勝一 『物理学I-B』『物理学II-B』『化学・物理学実験 A/B』

 受験も終わり、自分の好きなことや、興味のあることに思いっきり向き合える時期ですね。いろんなことに挑戦して下さい。私は、本はあまり読まないので、ここでは、私が好きな本や、影響を受けた本を紹介します。
吉田教員がすすめる本

1. ファインマン物理学V量子力学
ファインマン著/砂川 重信訳 ,岩波書店1979年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書他
学生の時、最も面白いと思った本です。数式は、あまり出てこないので、新入生でも読めると思いますが、内容は難しいです。物理に興味がある意欲的な学生にお勧めします。量子力学の本質に真正面から迫る内容です。

2. 青春を山に賭けて
植村 直己著,文春文庫, 1977年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

学生の頃、よく山に登っていましたが、この本を含む植村直己の数冊の本に影響を受けました。植村直己は不器用な人ですが、そこが自分にも似ていて共感でき、好きでした。

3. 精霊の守り人
上橋 菜穂子著,偕成社,1996年所蔵情報:医薬図-1階一般書

上橋菜穂子さんは、私が好きな作家さんです。中でも「精霊の守り人」を含む「守り人シリーズ」は面白いと思います。

4. 百万回生きたねこ
佐野 洋子著,講談社,1977年
絵本です。子供に読んでやると、涙で途中で読めなくなることがよくありました。親になったとき、子供に読んであげる絵本としておすすめします。ちなみに、我が家には、猫が3匹います。

荒舘 忠 『生命科学Ⅰ-A/B/C』『生命科学入門』『生物学実験』など

 興味がある本は、試しに読んでみるのが良いと思います。その中から自分にとっての良い本(宝物)を見つけて欲しいです。様々な経験を通して大学生活を楽しみましょう。
荒舘教員がすすめる本

1. 改訂第3版 生薬単(ショウヤクタン)語源から覚える植物学・生薬学名単語集
伊藤 美千穂・北山 隆監修,原島 広至著,
丸善雄松堂,2017年 所蔵情報:医薬図-1階 専門書書架
漢方薬で使われる生薬の本なので、それらに興味がある人はもちろんですが、植物に興味がある人にもお勧めの本です。とにかく植物のすごさが分かります。また、植物の学名に用いられるラテン語の説明や植物名の語源に関する情報(神話や生活習慣など)が盛りだくさんに記載されています。それらは英語や化学、生物学などの知識と繋がります。掲載されている生薬の原料となる基原植物は、本学薬学部付属薬用植物園(杉谷キャンパス)や自然豊かな富山県内で観察することができます。

2. もやしもん①~⑬
石川 雅之著,講談社,2005~2014年
カビ(真菌)や細菌、ウイルスが目で見えてしまう主人公の男子大学生が、農学部での様々な出来事を通して成長した約1年間を描いた漫画です。とにかく舞台となる大学と個性豊かなキャラクターがおもしろい。各種微生物や発酵食品(酒、みそ、ヨーグルト、チーズなど)について学べます。アニメ化、実写ドラマ化もされているので様々なコンテンツで楽しめます。

3. はたらく細胞①~⑥
清水 茜著,講談社,2015~2021年 所蔵情報:医薬図-2階 医療系マンガ

細胞を擬人化した漫画です。役に立つ漫画として各メディアで取り上げられているので知っている方も多いと思います。主に血液細胞が登場しているので、それらに関わる生命現象について興味を持つきっかけになったら嬉しいです。アニメ化やスピンオフ作品もあるので様々なコンテンツで楽しめると思います。実写映画化が発表されたので、どんな映像になるのか楽しみです!

4. 新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求
ドナルド・R・キッシュ、オギ・オーガス著,寺町 朋子 訳,早川書房,2018年 所蔵情報:医薬図-1階 専門書書架

さまざまな薬の発見や開発の歴史が書かれた本です。新薬開発研究者(新薬の狩人:ドラッグハンター)が創薬プロジェクトを立案してから新薬発売に至る割合が、サブタイトルの成功率0.1%です。いま使われている薬がどのように開発されたのか興味がある人にお勧めです。

国際教育部門

タランディス ジュニア ジェラルド レイモンド 『ESP Ⅰ、Ⅱ』

 Here is an excellent reference book that can help you master English grammar. 英文法をマスターするのに役立つ優れた参考書を紹介しよう。
タランディス教員がすすめる本

1. 日本人がはまりがちな英語の落し穴〜自然な英語へのA to Z〜
David Barker著
 ,BTBPress, 2010年
Are you struggling to learn English grammar? This book is a great way to fix those common mistakes Japanese learners make! A super cool point is that it targets the exact things Japanese students usually mess up. Plus, the helpful exercises at the back will help you practice and actually fix your own grammar. For example, imagine finally understanding how to use articles like “a”, “an”, and “the” correctly! If you are serious about improving your English grammar, I can’t recommend this book highly enough.

英文法の学習に苦労していませんか?この本は日本人学習者がよく犯す間違いを直すのに最適です!この本は、日本人学習者がよくやりがちな間違いに的を絞っています。さらに、巻末の練習問題で自分の文法を練習し、実際に直すことができます。例えば、”a”、”an”、”the “などの冠詞の正しい使い方を最終的に理解することを想像してみてください!もしあなたが本気で英文法を上達させたいと考えているのであれば、この本を強くお勧めします。

名執 基樹 『ドイツ語基礎Ⅰ、Ⅱ』『ドイツ語コミュニケーションⅠ、Ⅱ』

 面白い本をたくさん読んで下さい。かつ、いろんなタイプの面白さを体験して下さい。エグいのも面白さのうち。なんじゃこりゃあも面白さのうち。その端広い経験は、貴方が何かを生み出そうとする際に貴方のインスピレーションの源となって、きっと助けてくれる筈です。
名執教員がすすめる本

1. 武器を捨てよ!(上/下)
ベルタ・フォン・ズットナー著,新日本出版社,2011年
所蔵情報:中央図-1階学生用図書
ズットナー(1843-1914)は女性初のノーベル平和賞受賞者。本書は世界中の人々の心をつかみ、平和運動を一挙に高めるきっかけとなりました。上から目線の教条的な小説ではありません。素朴な貴族女性を主人公とした100%物語の力による反戦小説。歴史に興味がある人も是非。

2. 吉里吉里人(上/中/下)
井上 ひさし著,新潮社,1985年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

1980年代。厚手の本は売れぬと言われた時代に飛ぶように売れた大作です。読売文学賞、日本SF大賞を受賞。内容は東北のとある村が日本から独立するというお話。国とは文化とは?笑って泣いてありきたりの社会観をふっとばす小説です。

3. カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキー著,光文社など,2006年(光文社新訳版)
所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本 他
生と死、貧困、虐待など現代に通じるテーマ群を個性的な登場人物らに託し、なおかつ犯罪小説の枠内に閉じ込めた世界文学の代名詞的小説。登場人物たちの声はそれぞれが同等の重みを持ち読者を感情と思考の冒険に誘います。昔の学生は冒頭部の冗長さとロシア語人名のわかりにくさに戸惑いましたが、今の時代はWebという武器があります。お勧めです。

4. カンディード
ヴォルテール著,光文社,2015年(光文社新訳版)所蔵情報: 中央図-2階新書・文庫本
神様が作った世界ならどんな悲劇にも意味がある筈。そのテツガクを信じた若者カンディードは混乱に次ぐ混乱により世界中を流転。この世がいかにデタラメであるか体験します。テイストはライトでブラック。いわばドタバタ劇。しかし、最後にたどり着く「わたしたちはわたしたちの畑を耕そう」の思想はとてもとても深い。作者ヴォルテールは18世紀の啓蒙思想家。歴史に関心のある人にもお勧め。

5. 折れた竜骨(上/下)
米澤穂信著,東京創元社,2013年
歴史ものでありファンタジーであり推理小説。米澤穂信は『氷菓』や『さよなら妖精』など日常の推理を描く推理小説家ですが、その試みは認識の力を持って与えられた状況を生きる姿を物語のスポットライトの中心に据えるという意味で現代的。現代の日本の小説を好きにさせてくれる小説家の一人です。

6. はてしない物語(上/下)
ミヒャエル・エンデ著,岩波書店,2000年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書

読み手が登場人物となるメタ小説的な仕掛けのファンタジー。苛められっ子の主人公がウロボロスの絵が表紙の本を盗む所から話は始まります。空想と現実。尻尾を噛み合うウロボロスの絵のように双方が噛み合う世界観、登場人物それぞれが物語を持つ世界観(「それはまた別の話」)は魅力。反戦・環境運動で社会を動かした八十年代ドイツの若者のバイブルです。

7. 銀河ヒッチハイク・ガイド
ダグラス・アダムス著,河出書房新社,2005年
現代社会はポンコツかも。反核・環境運動が盛り上がるヨーロッパで若者たちにバカウケだった作品。作者はイギリスの喜劇集団モンティ・パイソンで脚本家を書いていた人物、地球が宇宙バイパス開発のためぶっ飛ばされて話は始まり、時空を旅し原始の地球の自然の中で幕を閉じます(五巻目)。根強いカルト的ファンがいる傑作です。

ヨフコバ四位エレオノラ 『日本語リテラシー』『異文化間コミュニケーション』など

 最近、インターネットから気軽に情報を入手できるようになっていますが、本を手にとって、ページをめくりながら物語の世界に吸い込まれるのも貴重な経験だと思いますので、様々な世界を切り開いてくれる本をたくさん読んでください。ここで、滅多に触れることのない異色の文化である東欧の世界の読書もいくつか紹介したいと思います。
ヨフコバ教員がすすめる本

1. 現代東欧文学全集 第1 「ノンカの愛」 ほか
ペトロフほか著
 ,恒文社,1967年
全集には様々な東欧の国の作品が収めあれていますが、ここで推薦したいのは、20世紀の半ば頃のブルガリア北部の地域の人びとの生活を描いた「ノンカの愛」(原作1956年)という作品です。「ノンカの愛」は原語からのブルガリア文学の日本語訳として最も古い作品の一つです。

2. 別れの時
アントン・ドンチェフ著,松永 緑弥 訳,恒文社, 1988年(原作1964)
オスマン帝国の支配下におかれていた17世紀のブルガリアの中部の村の人びとは、イスラム教徒への改宗を迫られ、キリスト教徒として死を選ぶという悲惨な歴史を描いた作品です。戦争が止まない今の時代にもメッセージ性が高い作品です。1988年には映画化されています。

3. バラの名前(The name of the rose)
ウンベルト・エーコ著,河島 英昭 訳,東京創元社,1990年(原作1980)

作品の舞台は、14世紀の北イタリアの修道院です。修道院の修道士の異常な死の謎に迫ったミステリー作です。文学のみならず、「記号論」の名作としても人気を集めた世界的ベストセーラーです。1986年には映画化されています。

4. 『一般言語学講義』(『言語学原論』を改版新訳)
フェルディナン・ド・ソシュール著,小林 英夫 訳,岩波書店,1972年 所蔵情報:中央図-書庫2層 他

ソシュールの死後、ジュネーブ大学で講義を受けていたソシュールの教え子達が講義メモをもとに出版した著名な言語学者の言語理論の本(原作1916年)です。ソシュールの言語学理論およびその理論に由来する多くの概念が言語研究に大きな影響を与えています。将来的に、言語の研究に携わりたいと考えている人には是非お勧めしたい一冊です。

5. 日本文法研究
久野 暲著,大修館書店,1973年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書 他

著者の久野暲氏はハーバード大学で日本語および日本語学の教育に携わっており、日本語を日本語非母語話者と同じ目線で記述しています。まさに、異文化の観点から見た自文化というスタンスで書かれた本です。将来、日本語教育および研究に携わりたい人には是非読んで欲しい一冊です。

福田 翔 『中国語基礎Ⅰ・Ⅱ』など

 読書によって様々な世界を知ることは、とても楽しいことです。自分の視野が広がるとともに、この多様な世界に対して物事を相対化し、公平な立場で見る力も身につきます。私はよく中国へ行きますが、スーツケースに、必ず本を買って帰るスペースを空けておきます。私からは、外国語が学びたくなる本、海外に行きたくなる本を紹介します。
福田教員がすすめる本

1. 28言語で読む「星の王子さま」世界の言語を学ぶための言語学入門
風間伸次郎著,山田怜央編著
 ,東京外国語大学出版会,2021年 所蔵情報:人文学部
「言語学!」なんだか難しそうな気がしますよね?でも、少し言語学の知識があると、様々な外国語を気軽に学ぶことができます。そんな素敵な体験をさせてくれるのがこの本です。「星の王子さま」を通して、世界の様々なことばに触れてみてください。

2. 言語楽(げんごがく)さんぽ
井上 史雄著,明治書院, 2007年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
日常に広がることばの不思議やおもしろさ、海外での体験等について、社会言語学・方言学の研究者である著者がユーモアたっぷりに語ってくれます。ことばについての理解が深まるのはもちろん、生きるのがさらに楽しくなるかもしれません。

3. 寄り道ふらふら外国語
黒田 龍之介著,白水社,2014年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書 他

ふらふら道草をするようにいくつかの外国語を勉強する面白さを教えてくれる一冊です。フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語と盛りだくさん!海外での体験、書籍、映画等を取り上げながら、エッセイ風につづられています。

4. 中国語はじめの一歩[新版]
木村 英樹著,筑摩書房,2017年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本 他

中国語に触れたことがない人でも手に取って読むだけで、中国語の面白さや仕組みについて学ぶことができる1冊です。まるで先生の授業を聞いているかのように読み進めることができ、きっとさらに中国語を勉強したくなることでしょう。

5. 相席で黙っていられるか: 日中言語行動比較論
井上 優著,岩波文庫,2013年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書 他

日本人と中国人のことばやコミュニケーションスタイルの違いについて、「不思議だな」、「どうしてかな」と感じる現象を取り上げ、それらを比べて考えることで、共に自然なものとして見える見方を探っていく!異なる現象、文化、考え方等に直面したとき、「比べて考える」ことの面白さを教えてくれえる一冊です。

6. 言語:ことばの研究序説
エドワード・サピア(安藤 貞雄訳),岩波書店,1998年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本 他

アメリカの言語学者エドワード・サピア(1884-1939)による言語学の本格的な古典的入門書!言語の特質について、また言語と人種、文化等の深い関係について少しでも興味がある人は、ぜひ一度手に取ってみてください。

水野 真理子 『基盤英語』

 読書の魅力は、書かれた文字をゆっくり辿ることで、登場人物の姿や表情、内面、場面や情景を自身の中で映像化し、疑似体験できることだと思います。富山大学生としての新生活。日々の喧騒からちょっと離れて、静かにページをめくり、自由に本の世界にひたってみてはいかがでしょうか。
水野教員がすすめる本

1. 青桐
木崎 さと子著
 ,文藝春秋,1985年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
木崎さと子は富山にゆかりのある芥川賞作家です。受賞作の『青桐』は、富山の高岡市を舞台とし、末期の乳癌を患った叔母と生活をともにすることで、生きる意味を見出していく女性の物語です。病と人生、家族のあり方などに興味のある方にお薦めです。

山岸 倫子 『基盤英語I・II、ESP I・II』

 手軽にそして瞬時に情報を得られる機会があふれるいま、時間をかけて本を読むという行為は、「タイムパフォーマンス」なるものが低いと感じる方もおられるかもしれません。でも、読書は単に情報を与えてくれるだけではありません。本と対話しながら読み進める中で、自分自身との対話も促され、それは自分を見つめなおす機会にもなるのです。自分のために使う時間がふんだんにある大学生の間に、ぜひたくさんの本と出会い、本そして自分自身との対話を楽しんでください。
山岸教員がすすめる本

1. ボーイズ:男の子はなぜ「男らしく」育つのか
レイチェル・ギーザ 著 , 冨田 直子訳,
DU BOOKS,2019年
「フェミニズム」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。簡単に言うと、社会が女性に期待する「女らしさ」というジェンダーバイアスへの問題提起を行う思想や運動のことです。本書はその逆、つまり社会が男性に期待する「男らしさ」(例えば「男の子なんだから泣かないの!」なんていうフレーズはよく聞きますよね)に切り込み、それが男性ひいては社会全体にどのような害悪をもたらすのか、そしてその呪いからどうすれば解き放たれるのかについて、わかりやすく教えてくれます。自らに課されたジェンダー的役割に違和感を覚えている男性だけでなく、社会を構成するすべての人に読んでもらいたい一冊です。

2. The Elephant Vanishes(『象の消滅』)
Haruki Murakami(村上春樹)著,Vintage, 1994年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
大学に入学し、これからもっと英語力を伸ばしたいと考えておられる方もおられると思います。そういった方に是非おすすめしたい一つの方法に、日本の小説を英語で読む、というものがあります。好きな作家さんの作品が英訳されていれば、それを読んでみるのが一番ですが、ここでは、村上春樹さんの短編集の英訳をご紹介しておきます。理由は、英訳の質が素晴らしいからと、短編なので途中で挫折せずに読み進めることができる可能性が高いからです。また、英語版と日本語版(『象の消滅』)を照らし合わせながら読むと、英語表現の勉強になるだけでなく、文化の違いも感じ取れて(英訳が難しい日本の文化って多いのです)、改めて日本文化について考える機会にもなると思います。村上春樹さんの英訳された短編集にはBlind Willow, Sleeping Woman(『めくらやなぎと眠る女』)もありますので、興味がある方はそちらもチェックしてみてください。

笹山 啓 『ロシア語基礎Ⅰ・Ⅱ』『ロシア語コミュニケーションⅠ・Ⅱ』

 読書は動画視聴に比べて時間も集中力も必要だから苦手だ、という人がいますが、それは本の1ページ目から最後のページまで、くまなく目を通して記憶しておくことを「読書」だと思っているからでしょう。動画を早送りしたり巻き戻したりするように、本も行ったり来たりしながら面白そうなところだけを読む、それでもいいのです。
笹山教員がすすめる本

1. 戦争は女の顔をしていない
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著
 ,岩波書店,2016年 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
ウクライナにもルーツを持つベラルーシ人のロシア語作家アレクシエーヴィチは、2015年のノーベル文学賞受賞者。近年では日本のメディアにも頻繁に登場し、民主主義を擁護する発言を続けています。第2次世界大戦に従軍した女性兵士へのインタビュー集である本作から、歴史に顧みられない人々の声を聞き取る彼女の作業は始まりました。

2. 亡命ロシア料理
ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス著,未知谷, 1996年(新装版2014年)所蔵情報:中央図-1階学生用図書 他
ソ連時代にアメリカに亡命した批評家ふたりが、故郷の味を懐かしみ、再現を試みながら書き連ねたエッセイ。非常に洗練された文体の比較文化論になっており、ときに漏れるアメリカの食文化への悪態すらユーモアに溢れていて面白いです。レシピ本としても使えるので、自炊のお供にいかがでしょうか。

3. ウクライナ日記―国民的作家が綴った祖国激動の155日
アンドレイ・クルコフ著,ホーム社,2015年

2013~4年にウクライナで発生し、いわゆる「マイダン革命」へと続いた反政府運動の時期に、作家クルコフはキーウ中心部の自宅からデモの様子を観察していました。昨今のウクライナ情勢を理解するための基礎知識を、本書は国際政治や軍事、経済とはまた別の観点から提供してくれます。

4. テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム
ダン・アッカーマン著,白揚社,2017年
決められた数のブロックが並ぶと消えるパズルゲームの元祖テトリス。実は1980年代にソ連で発案されました。しかし、テトリスが世界的にヒットしたのはセガや任天堂といった企業による商品化が大きな要因です。冷戦のさなか、ソ連の技術が日本にすんなり輸出されるはずはないのに、なぜ?本書を読むと分かります。

5. 食の宝庫キルギス
先崎 将弘著,群像社,2019年

ロシア語が公用語の国はロシアだけではありません。カザフスタンとキルギスという中央アジアの国もあります。本書は「食」を切り口に、日本人と顔立ちがそっくりな人々が多く住むキルギスの豊かな文化と歴史の一端に迫ります。実際、中央アジア料理はおいしい!

髙野 美帆 『基盤英語』

 本との出会いが人生に大きな影響を与えるということが多々あると思います。ぜひ大学生の間に様々な本に触れ、新しい世界に出会い、読書ライフを楽しんでください。
髙野教員がすすめる本

1. 置かれた場所で咲きなさい
渡辺 和子著
 ,幻冬舎,2012年 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本
修道院のシスターであり、また大学学長であった著者が、人生を豊かに生きるためのヒントをわかりやすくまとめた本です。ポイントごとに短く区切られているので、空いた時間に少しずつ読むこともでき、おすすめです。

2. 忘れられない仕打ちを赦す 私がたどった解放への旅路
リサ・ターカースト著
 ,いのちのことば社,2023年
私が翻訳した本を紹介します(笑)。英語ではよくforgetとforgiveを関連づけますが、筆者は「forgetできないことでもforgiveできる」と教えてくれます。赦すのは、自分が自由になるためだと言います。個人的には、筆者の「しょうもない」実体験に励まされました。興味があればぜひ!

保健体育・情報処理部門

栗本 猛 『情報処理』『データサイエンスの実践』『量子力学』

 時間のあるうちに乱読でいいからたくさんの本を読んで、自分に合うものを見つけましょう。
栗本教員がすすめる本

1. データサイエンス「超」入門:嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい: truth or fake: data science techniques 所蔵情報:中央図-1階学生用図書
松本 健太郎著
,毎日新聞出版2018年
フェイクに騙されず、データの信頼性を確かめたり、その意味することを正しく理解するための方法を身につけるための第一歩として目を通してみてください。難しい数式は出てきません。

2. 数学文章作法 基礎編 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本
結城 浩著,ちくま学芸文庫, 2013年
書名に数学とありますが、数学を説明するのではなく数学の証明のような論理的文章を書くためのノウハウがコンパクトにまとめられています。理系、文系に関わらず大学でレポート等を書くのに参考となります。続巻として推敲編も出ています。

3. 物理学読本 第2版 所蔵情報:中央図-2階新書・文庫本
朝永 振一郎 著,みすず書房,1969年

物理学という学問を題材にして、科学的な考え方を伝えるための書籍。物理学を専門とする人にも、そうでない人にも非常に参考となります。

水谷 秀樹 『健康・スポーツ実技』

 定期的に書店に足を運ぶことをお勧めします。本を眺めながら、書店内を歩き回るだけでも良いと思います。本を手に取るとき、その動機は人それぞれと思います。タイトルに魅かれて、本の中身(はじめに、目次、あとがきなどを読んで)に魅かれてなどなど。分野を問わず「ちょっと読んでみようかな」と感じた本に出会えたらラッキーです。
水谷教員がすすめる本

1. 見えないスポーツ図鑑
伊藤 亜紗他著
,晶文社2020年
「スポーツ選手が感じている本質を、何らかの別の方法や道具を使って再現することを「翻訳」と称して、その悪戦苦闘ぶりが楽しくまとめられている。「サッカーを翻訳する」、「卓球を翻訳する」、「野球を翻訳する」など(目次より)

2. ビヨンド・リスク ―世界のクライマー17人が語る冒険の思想―
ニコラス・オコネル著,ヤマケイ文庫,2018年

「刊行から四半世紀を過ぎてなお、一線のクライマーらに影響を与える山岳名著。20世紀を代表するレジェンド17人が自らの登山哲学、冒険思想を語る」(裏表紙より)

大橋 隼人 『情報処理』

 インターネット上で様々な知識を手軽に得ることができる現代ですが、1冊にまとめられた情報、知識、物語を手元に携えて隙間時間を充実させることも一興だと思います。皆さんが読書するときは好きなジャンルや特定の著者に偏りがちになると思いますが、一度、他者のすすめる本を読んでみると新しい世界が拓けると思うので、是非お試しください。
大橋教員がすすめる本

1. 学び合い、発信する技術 アカデミックスキルの基礎
林直 亨著
 ,岩波書店,2022年
必修科目「情報処理」ではアカデミックスキルの修得を目的としていますが、本書や類似書籍等に触れることにより様々な説明方法で多様なスタイルがあることを知り、一番自分にあうものを軸に身に付けていってもらえればと思います。

2. イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める!物理のしくみ
川村康文 監修,西東社, 2019年
身の回りの現象等について,「何故そうなるのか」を1ネタ2ページのカラーイラスト付きで簡易的に解説されています。読み物として物理が分かった積もりになれて、科学的な一般教養が身に付けられると思います。

3. ラ・フォンテーヌの寓話
ラ・フォンテーヌ 著,ドレ 画;窪田 般弥 訳,社会思想社,1987年

教訓的な内容の例え話(寓話)が様々な生物等を登場人物として1話2,3ページ程度で多数収録されています。明解な文章ではありませんが、考えながら、自分なりの解釈を楽しめると思います。